電験一種が難しいはずがない!

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見かけ倒しのコンデンサ型計器用変圧器(CVT) 平成30年度電験一種二次電力・管理問3

変圧器の問題に見せかけて二次側のことは考えないとするとあるのでただのLC回路
ニュートン・ラプソン法しかり、なんか電験ってこういう見かけ倒しの問題多くない?

今回使う知識はテブナン等価回路と電圧に関するキルヒホッフの法則のみ。
テブナン等価回路の説明はテブナンの定理 | 高校物理の備忘録がわかりやすかった。
互いに逆向きの起電力を二つ挿入して、"挿入した逆向きの起電力と元の回路"と"元の回路の起電力を取ったのと順方向の起電力の回路"の二つに分けて解くことで等価回路を求める。

平成30年度電験一種二次電力・管理問3その1
平成30年度電験一種二次電力・管理問3その2

問題文は試験の問題と解答 | ECEE 一般財団法人電気技術者試験センターより引用。

私の解答

(1) テブナン等価回路の電圧はab端を解放したときにab端の電位差に等しいので
 \displaystyle \dot{v}\frac{\frac{1}{j\omega C_2}}{\frac{1}{j\omega C_1} + \frac{1}{j\omega C_2}} = \frac{\dot{v} C_1}{C_1 + C_2}より \displaystyle v= \frac{VC_1\sin\omega t}{C_1 + C_2}
テブナン等価回路のアドミタンスは電圧源を短絡したときの合成アドミタンスに等しいので \displaystyle j\omega (C_1 + C_2)
したがってこれを一つのコンデンサとみたときの静電容量は \displaystyle C_1 + C_2
図はこれを直列につなぐだけなので略。

(2) (1)の等価回路でコンデンサとコイル(L)における電圧降下の和がゼロ、すなわち合成インピーダンスがゼロであれば、Trに \displaystyle \frac{VC_1\sin\omega t}{C_1 + C_2}の電圧がかかる。
すなわち \displaystyle \frac{1}{j\omega (C_1 + C_2)} + j\omega L = 0
 \displaystyle \Leftrightarrow \omega^2 L - \frac{1}{C_1 + C_2} = 0
 \displaystyle \Leftrightarrow 4 \pi^2 f^2 L (C_1 + C_2) = 1が求める条件である。

(3) トランスが単にインダクタになるだけ。合成回路は電源と静電容量 \displaystyle C_1 + C_2コンデンサとリアクタンス \displaystyle L + L_mのインダクタを直列につないだだけの回路なので略。

(4) 電源電圧を \displaystyle V\sin\omega t, コンデンサの静電容量をC, インダクタのリアクタンスをLと置きなおして立式を終えた後に戻す。
回路に流れる電流は \displaystyle Q = Cv_cの両辺を微分 \displaystyle I = C\frac{dv_c}{dt}
インダクタにおける電圧降下は \displaystyle L \frac{dI}{dt} = LC\frac{d^2v_c}{dt^2}
したがって回路全体の電圧降下についての保存則から
 \displaystyle LC\frac{d^2v_c}{dt^2} + v_c = V\sin\omega tが成り立つ。
電圧、静電容量およびリアクタンスを元の変数に戻せば、
 \displaystyle (L + L_m)(C_1 + C_2)\frac{d^2v_c}{dt^2} + v_c = \frac{VC_1\sin\omega t}{C_1 + C_2}を得る。

(5) 電圧、静電容量およびリアクタンスをV, C, Lで置きなおした微分方程式を解き、解を得た後で戻す。
(定常解)
Cにかかる分圧を求めればよいから電源電圧を \displaystyle \dot{v}とすれば
 \displaystyle \dot{v_c} = \dot{v}\frac{\frac{1}{j\omega C}}{\frac{1}{j\omega C} + j\omega L} = \frac{\dot{v}}{1 - \omega^2CL}
したがって
 \displaystyle v_c =  \frac{V\sin\omega t}{1 - \omega^2CL}
(過渡解)
右辺をゼロとおいた微分方程式特性方程式
 \displaystyle LC\lambda^2 + 1 = 0より \displaystyle \lambda = \pm j\sqrt{\frac{1}{LC}}
ここで \displaystyle \omega' = \sqrt{\frac{1}{LC}}とおけば、
過渡解は \displaystyle v_c = Ae^{j\omega't} + Be^{-j\omega't}とかける。
(一般解)
以上より微分方程式の一般解は
 \displaystyle v_c = Ae^{j\omega't} + Be^{-j\omega't} + \frac{V\sin\omega t}{1 - \omega^2CL}である。
 \displaystyle v_c(0) = 0より \displaystyle B = -Aであるからこの解は
 \displaystyle v_c = j2A\sin\omega't + \frac{V\sin\omega t}{1 - \omega^2CL}と書ける。
 \displaystyle \frac{dv_c}{dt}|_{t=0} = 0より \displaystyle j2A\omega' + \frac{V\omega}{1 - \omega^2CL} = 0
したがって \displaystyle A = j\frac{V\omega}{2\omega'(1 - \omega^2CL)}であるから
 \displaystyle v_c = \frac{V}{1 - \omega^2CL}(\sin\omega t - \frac{\omega}{\omega'}\sin\omega't)である。
V, C, Lを元の変数に戻せば、
 \displaystyle v_c = \frac{VC_1}{(C_1 + C_2)\{1 - \omega^2(C_1 + C_2)(L + L_m) \} }(\sin\omega t - \omega\sqrt{(C_1 + C_2)(L + L_m)}\sin\frac{t}{\sqrt{(C_1 + C_2)(L + L_m)}})
を得る。

(6) (2)の条件が近似的に成り立つとすると、 \displaystyle \omega' < \omegaであるから \displaystyle \sin\omega'tに由来する項が低周波成分となる。
トランスにかかる低周波成分の電圧は
 \displaystyle L_m(C_1+C_2)\frac{d^2v_c}{dt^2} \displaystyle \sin\omega'tの項であり、
 \displaystyle \frac{C_1V\omega \omega' L_m \sin \omega' t}{1 - \omega^2(C_1 + C_2)(L + L_m)} = \frac{C_1V\sin \omega' t}{ -\omega^2(C_1 + C_2)^2 \sqrt{L(L + L_m)}} となり、
この大きさは \displaystyle L_mのおよそ-0.5乗に比例するから、 \displaystyle L_mが磁気飽和により低下すると増大する。

疑問

標準解答だとコンデンサにかかる電圧の低周波成分を考察しているが、コンデンサにかかる低周波の電圧とトランスにかかる低周波の電圧では
後者が \displaystyle \frac{L_m}{L + L_m}倍になっており話がかわってくるはず。なんであれで解答になるんだろう。